こんにちは、KAIGO KAKUMEIです。
いきなりですが、みなさんは介護・福祉にかかる費用(お金)についてどんなイメージをお持ちでしょうか。
これまでに介護職の低賃金構造や介護報酬減額による法人の経営難について記事を書いてきましたが、「福祉=安価」という文化的バイアスが介護業界のサービスの質を下げてしまっている隠れ要因のひとつなのです。
「福祉は安価なもの」という考えや認識が文化的に浸透した背景と、この課題へのアプローチについて執筆します。
なぜ「福祉は安価であるべき」というイメージが根付いたのか
日本の福祉制度は、戦後の「最低限の生活保障」という理念のもとに構築されてきました。生活保護や年金制度、介護保険などの仕組みは、国民の不安を和らげる役割を果たしてきましたが、その一方で「福祉=無償または低価格で提供されるもの」という文化的イメージが定着してしまったと言えます。
この価値観は、制度設計だけでなく、メディア報道や政治的言説にも反映されてきました。福祉サービスの価格が上がることは「負担増」として否定的に語られ、介護職の報酬引き上げも「財源の限界」や「効率化」の名のもとに抑制されてきた経緯があります。
その結果、福祉の専門性や対価が正当に評価されず、「やってくれて当然」「お金を払うほどのことではない」といった社会的認識が形成されてしまいました。
制度外要求と“クレクレマン”の存在
こうした文化的背景の延長線上に存在するのが、制度外の要求を当然のように行う利用者や家族、いわゆる“クレクレマン”の存在です。
多くの介護施設では、契約に含まれないサービスや対応を求められる場面が日常的に発生しています。たとえば、送迎時間外の対応、医療的ケアの代替、私物管理の代行など、本来は制度上提供できないにもかかわらず、「それくらいやってくれてもいいんじゃないの」という空気が現場を圧迫しています。
このような要求は、職員の倫理観や善意に依存する形で処理されがちであり、結果としてサービスの境界が曖昧になり、現場の疲弊と制度の形骸化を招いているのが現状です。
幻想の打破と認識の再構築
この構造的な問題に対しては、以下のような多層的なアプローチが必要です。
- 制度設計の明確化と可視化
サービスの範囲や契約内容を、利用者・家族に対して明確に伝える仕組みを強化することが求められます。パンフレットや契約書だけでなく、現場での説明や可視化ツールの導入が有効です。 - 職員の専門性の再定義と発信
介護職は単なる「手伝い」ではなく、専門的知識と技術を持つ職業であることを、SNSや広報活動を通じて社会に発信していく必要があります。 - “クレクレ文化”への対抗言語の構築
制度外要求に対して「断る」だけでなく、「なぜそれができないのか」「それを続けると誰が困るのか」を丁寧に伝える言語と態度を現場に浸透させることが重要です。これは単なるマニュアルではなく、文化的対話の再構築でもあります。 - 報酬体系と社会的評価の連動
介護報酬の引き上げは、単なる賃金改善ではなく、「この仕事には価値がある」という社会的メッセージでもあります。制度と文化の両面から、職業としての尊厳を再定義していく必要があります。
まとめ:幻想が壊れれば、現場スタッフやサービスの価値があがる
「福祉は安価であるべき」という幻想は、制度設計と現場運営の両方を蝕んでいます。そしてその幻想が生む“クレクレ文化”は、介護職の専門性と尊厳を奪い、制度の持続可能性を脅かしています。
この幻想を問い直すことは、批判ではなく介護サービスの価値を見直すための第一歩です。現場から社会へ、制度から文化へ。介護の価値を再定義する取り組みは、誰もが今すぐにでもはじめることができます。
目指すべきは、まさにこの幻想の打破と現場主導の価値創造です。
あとがき
介護施設では利用者や利用者家族(特に利用者家族)から「これって別に料金かかるんですか」「これはやってもらえないんですか」などと言われるのは日常茶飯事。心の中はぶっちゃけ「勘弁してくれよ」です。
このような事を言われたときに、何も考えずにYESを出してしまうのは、自身が提供しているサービスの価値を下げているという事。
介護・福祉サービスが安価であるべきなんて冗談じゃない。だからこそ根付いた概念を一度ぶっ壊す取り組みや行動が早急に必要なのです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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