こんにちは、KAIGO KAKUMEIです。
今回は、最近SNSで大きな話題となっており、議論されている”シャドウワーク”の実態と課題などについて執筆します。
シャドウワークとは何なのか
シャドウワークとは、報酬が発生せず、公式な業務として認識されないものの、職務を遂行する上で欠かせない作業のことです。もともとは経済学者であるイヴァン・イリッチが提唱した概念で、家事や育児などの無償労働のことをを指していましたが、近年では介護や福祉の現場でも注目されています。
特にケアマーネジャーや介護職員が日々行っている”見えない仕事”は、制度上の業務範囲を超えており、現場の善意や使命感によって支えられているのが実情なのです。
介護現場に潜む“見えない仕事”の正体
介護職員は、利用者の居室整理や私物の管理、家族との非公式な相談対応、業務外に研修への参加を行うなど、報酬に反映されない作業を日常的にこなしています。
ケアマネージャーの場合は、通院の付き添いや行政手続きの同行や代行、医療機関との連携、独居高齢者の安否確認など、制度上の業務を超えた支援を行うことが少なくありません。
これらの業務は、利用者の生活の質を支えるうえで重要な役割を果たしていますが、介護報酬には反映されず、職員の負担として蓄積されています。
介護現場におけるシャドウワークの実例一覧
| 担当者 | シャドウワークの内容 | 本来の業務との違い | なぜ発生するのか |
|---|---|---|---|
| 介護職 | 利用者の私物整理・洗濯 | 生活援助に含まれない場合がある | 利用者が自力でできず、放置できないため |
| 介護職 | 家族からの電話相談対応(勤務外) | 業務時間外・記録に残らない | 信頼関係や不安解消のために応じてしまう |
| ケアマネ | 通院や行政手続きへの同行 | ケアプラン外の個別対応 | 独居高齢者で代行者がいないケースが多い |
| ケアマネ | 医療機関との連携・情報提供 | 法定業務に含まれないことがある | 利用者の安全確保や連携の必要性から |
| ケアマネ | クレーム対応や関係機関との調整 | 契約外の調整業務 | 現場の混乱を防ぐために動かざるを得ない |
なぜ善意が“制度の穴”を埋め続けるのか
シャドウワークが生じる背景には、介護保険制度では十分に対応しきれない現場のニーズがあります。制度上、ケアマネージャーの主な業務は、ケアプランの作成やサービス調整とされていますが、実際の現場ではそれだけでは利用者の生活を十分に支えることができず、その他さまざまな要求がなされているのが現実なのです。
また、「やってあげたい」「見捨てられない」といった職員の倫理観や使命感が、制度の隙間を埋める形でシャドウワークを生み出してしまっています。事業所のマネジメントが不十分であったり、業務範囲を曖昧にしてしまっている(せざるを得ない)ことも、シャドウワークが常態化する要因となっています。
見えない負担が現場をむしばむ
シャドウワークにおける最大の課題は、職員の疲弊と離職リスクです。報酬に反映されない業務が積み重なることで、モチベーションが低下し、離職につながってしまっているケースも少なくありません。
また、業務が特定の職員に偏ってしまうことで、誰がどこまで担当するのかがはっきりしなくなり、責任の分担が曖昧になることで、サービスの質にもばらつきが生じます。制度と実態の乖離が進むと、介護報酬の適正化が難しくなり、利用者にとっても保険外サービスの負担が増える恐れがあります。これは、介護の公平性や持続可能性を揺るがす深刻な問題です。
シャドウワークからの脱却は可能か
シャドウワークへの対策としてまず必要なのは、業務の”見える化”です。業務記録の整理や契約書への明記によって、何が業務で何が善意なのかを明確にすることが重要です。
制度面では、保険外サービスの整理や民間との連携による業務分担が求められます。
たとえば、生活支援サービスや地域包括支援センターとの連携によって、ケアマネージャーの負担を軽減することです。
現場では、ICTの活用や業務効率化によって、シャドウワークの時間的負担を減らす工夫も有効です。徐々ではありますがICTやAIの導入が進んでいることも事実です。横浜市などで導入されているケアマネ補助員制度も、実務支援の一例として注目されています。
※ケアマネ補助員制度…ケアマネージャー(介護支援専門員)の業務負担を軽減するために、事務作業や制度外の対応などをサポートする人材を配置する仕組みです。ケアマネが本来のケアマネジメント業務に集中できるようにすることが目的で、2026年度から全国的に導入が予定されています。
まとめ:見えない仕事に光を当てるために
介護業界におけるシャドウワークは、制度の隙間を埋める善意の仕事であると同時に、職員の負担を増やす構造的な課題でもあります。その存在を可視化し、制度的・現場的に対応することで、職員が誇りを持って働ける環境を整えるということに繋がるのではないでしょうか。
介護は人の生活を支えるサービスです。だからこそ、見えない努力に光を当て、持続可能な仕組みづくりを進めることが、これからの介護業界にとって必要不可欠なのです。
あとがき
”シャドウワーク”=”無償”という概念が当たり前に根付いているのが現状ではありますが、ニーズを掘り出し、それを理解し、”付加価値”をつける事が出来れば、有償化することも可能なんじゃないかと私は考えています。介護業界で働く皆さんの経験や知識を、保険外事業の一つとして具現化してみるのも、業界にとって新たなチャンスになるのではないでしょうか。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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