「介護予防」と「フレイル」 似て非なる概念を正しく理解する

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こんにちはKAIGO KAKUMEIです。今回は”介護予防”と”フレイル”について執筆します。

介護業界ではすでに浸透し、業界にかかわる人であれば誰もが知っている言葉でしょう。

高齢化が進む日本社会において、「介護予防」や「フレイル」という言葉は、介護現場や行政、メディアなどで頻繁に使われるようになりました。しかし、これらの言葉が本来持つ意味やアプローチの違いを正しく理解していない介護職の方が意外に多いなと感じます。

今回の記事では、両者の定義と背景、そして現場での混乱などについて整理し、介護職の人たちが向き合うべき本質について考えていきます。

介護予防とは?

介護予防とは、要介護状態になることを未然に防ぐための取り組みです。高齢者ができるだけ自立した生活を維持できるよう、運動・栄養・口腔・認知機能・うつ予防など、多面的な支援が行われます。

対象となるのは、要支援・要介護認定を受ける前の高齢者が中心です。地域包括支援センターなどを通じて、基本チェックリストによるスクリーニング(早期発見のための検査)が行われ、必要に応じて介護予防サービスが提供されます。

この取り組みは、単なる健康づくりではなく、制度的に位置づけられた「予防的介護支援」であり、地域包括ケアシステムの根幹を担う重要な施策です。

介護予防の確立と浸透の歴史

介護予防という概念が制度として確立されたのは、2006年の介護保険制度改正が契機です。この改正により、要支援者向けの「介護予防給付」が創設され、地域支援事業としての介護予防活動が全国に広がりました。

当初は「寝たきり予防」や「転倒防止」など身体機能の維持が中心でしたが、2010年代以降は認知症予防や社会参加の促進など、より包括的な視点が求められるようになりました。

2015年には「地域包括ケアシステム」が政策の柱となり、介護予防は医療・福祉・生活支援と連携する形で再定義されました。現在では、自治体ごとの特色ある介護予防事業が展開され、住民主体の活動も増えています。

フレイルとは?

フレイル(frailty)とは、加齢に伴って心身の予備能力が低下し、ストレスに対して脆弱になった状態を指します。身体的な衰えだけでなく、認知機能の低下や社会的孤立など、複数の側面が絡み合うのが特徴です。

日本では2014年、日本老年医学会が「フレイル」という訳語を正式に採用しました。2015年以降、経済財政諮問会議などで「フレイル対策」が政策課題として取り上げられ、医療・介護分野での注目が高まりました。実際に業界内で頻繁に使われ出したのは、コロナ渦の2020年~2021年頃からだったと記憶しています。

フレイルの重要な点は「可逆性」にあります。早期に発見し、適切な介入を行えば、健常な状態に戻る可能性があるため、単なる老化現象ではなく、予防・改善可能な「状態」として捉えられています。

 フレイル浸透のタイムライン

主な動き
〜2017年医療・介護専門職の間では既に概念が共有されていたが、一般には浸透していなかった。
2019年厚労省が「健康寿命延伸プラン」でフレイル対策を柱の一つに位置づける。
2020年コロナ禍で「生活不活発病」や「コロナフレイル」が社会問題化。メディアでも頻出。
2021年厚労省の広報誌や自治体の啓発活動で「フレイル予防」が一般向けに本格的に発信され始める。
2023年以降地域包括ケアや通いの場で「フレイルチェック」が定着。自治体・高齢者の間でも認知度が向上。

介護予防とフレイルの違いって何??

介護予防とフレイルは、目的や対象が似ているようでいて、実はアプローチや評価軸が大きく異なります。

項目介護予防フレイル
対象要介護リスクのある高齢者加齢に伴う脆弱性が高まった高齢者
概念国の制度に基づいて、介護を防ぐための取り組み医学的な視点から、弱ってきた状態を早めに見つけて改善する考え方
アプローチ体操や食事の工夫、口の健康、認知症予防など筋力や気力、社会とのつながりなどを総合的にチェックして支援する
評価方法市町村が配る「基本チェックリスト」で確認医師や専門職が、体重・歩く速さ・疲れやすさなどを細かく評価する
Frailty Indexなど

介護予防は制度に基づいた支援であり、行政的な枠組みの中で展開されます。一方、フレイルは医学的な視点から個別性を重視し、より細やかな評価と対応が求められます。

現場での混乱と課題

近年、「フレイル」という言葉が介護現場でも頻繁に使われるようになりました。しかし、その定義や違いを理解せずに使っている介護職の方も少なくありません。

「フレイル=介護予防」と誤解されがちですが、実際には評価軸も支援方法も異なります。制度上の「介護予防事業」と、医学的な「フレイル対策」が混同されている現場も多く、支援の質にばらつきが生じています。

また、フレイルは身体的な衰えだけでなく、孤立やうつなど社会的・心理的側面も含むため、単なる運動支援では不十分です。現場職員がその多面的な視点を持ち、正しく評価・支援できるよう教育・啓発が急務となっています。

まとめ:言葉の正確な理解が、現場の質を高める

「介護予防」と「フレイル」は、どちらも高齢者の生活の質を守るための重要な概念です。しかし、制度的な枠組みと医学的な視点の違いを理解せずに使うことは、支援の本質を見失うことにつながります

介護職の人たちがこれらの言葉を正しく理解し、現場での実践に活かすことで、より質の高い支援が行えるのではないでしょうか。

あとがき

言は支援のいしずえ、理解は実践のひかり

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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