ケアマネージャーが消えるとき、介護保険制度の息の根は止まる

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こんにちは。KAIGO KAKUMEIです。今回は、介護保険制度の根幹を担うケアマネージャーについて、多くの人たちが感じているであろう危機感について執筆します。

制度の仕組みや中身を知れば知るほど、「このままでは介護保険が使えなくなる制度になるのではないか」と現実的に感じる場面が増えてきました。
ケアマネージャーが減り続ける中で、待遇も支援も追いついていない現状なのにもかかわらず、制度はそのまま進んでいく。この違和感を、制度の外にいる方々にもぜひ現状を是非知ってほしい。

業界人の視点から、制度の矛盾と今後の課題について伝えます。

ケアマネージャーがいなければ介護保険は使えない

介護保険サービスを利用するには、まず”ケアプラン(介護の利用計画)”が必要であり、ケアプランを作成できるのは、原則としてケアマネージャー(介護支援専門員)だけです。

つまり、ケアマネージャーがいなければ、ケアプランが作れず、ケアプランがなければ、介護保険サービスは使えないということです。
この制度の構造は、介護に関わる方々には常識ですが、制度設計や政策判断にはその重みが十分に反映されていないように感じます。

それにもかかわらず、ケアマネージャーの数は減り続け、待遇改善も全くと言っていいほど進みません。私にはまるで「ケアマネージャーを減らそうとしているのか?」と問いたくなるような仕打ちにすら映ります。

ケアマネージャーの減少と高齢化が止まらない

居宅介護支援事業所(ケアマネージャーが所属する事業所)は、7年連続で減少しており、ピーク時の2018年から10.3%もの減少とのこと。ケアマネージャーの平均年齢も上昇し、50代後半〜60代が中心となっています。若手の参入はほとんど進んでいません。8年前くらいには、20歳台30歳台のケアマネージャーが多く在籍していたのを思い出します。
給料が安く、業務量が多く、責任が重い。そのうえ研修や資格維持に費用と時間がかかるというアドバンテージもあります。

これでは「なりたい職業」として若者に選ばれるはずがないですよね。制度と生活をつなぐ“入り口”であり、“翻訳者”のはずが、社会的にも経済的にも評価されていないのです。

処遇改善加算の空白地帯と報酬のリミット

介護職員には「処遇改善加算(給料を上げるための制度)」がありますが、ケアマネージャーは長らくその対象外でした。直近の制度改正でようやく分配対象に含まれましたが、実際にはほとんど改善されていないというのが現実なのです。

居宅介護支援事業所はそもそも金銭的な利益を生む構造になっておらず、その報酬は限られています。ケアマネージャーは、利用者・家族・医療・行政をつなぐ“制度の翻訳者”とも言える存在ですが、その価値が報酬に反映されていないのです。

制度の複雑さを読み解き、利用者の生活に落とし込む役割を担っているにもかかわらず、その専門性が正当に評価されていない。これが、介護業界内の声です。

更新研修の負担と制度のパラドックス

ケアマネージャーは5年ごとに「更新研修(資格を維持するための講習)」を受けなければなりません。費用は自己負担で、勤務時間外や休日に受講する人も多くいます。費用を法人負担とし、研修日を出勤扱いとする法人も存在しますが、まだまだ前者の取り扱いとなっている場合が多いのです。

制度はケアマネージャーに高い専門性を求めながら、その専門性を支える仕組みが整っていません。これでは、現場で働く人のモチベーションが下がるのも当然でしょう。

さらに、主任ケアマネージャー(より高度な資格を持つケアマネージャー)を管理者として配置する義務もあり、事業所運営のハードルはこれまでよりも更に高くなっています。人材確保が難しい中、制度の理想は、現場の疲労・疲弊の上に成り立ってしまっているのです。

制度を守るには再設計が早急に必要

このままでは、ケアマネージャー制度は“崩壊”ではなく“消滅”します。
そして、それは介護保険制度の”死”を意味するのです。

そのため、早急に下記のような制度の再設計が必要。

  • ケアマネージャーの役割を「制度の翻訳者」として再定義し、価値を評価した報酬へ見直しをする
  • 処遇改善加算に代わる加算及び、ケアマネージャーの処遇改善の為だけの新たな制度整備を行う
  • 更新研修の公費化やオンライン化で、現場負担を軽減する
  • 若手参入を促すための補助金制度や研修支援を設ける

そして何よりも、「ケアマネージャーがいなければ介護保険は使えない」という制度の本質を、国民全体が理解する必要があります。

まとめ:制度の崩壊は、日本社会の死に直結する

ケアマネージャーが消えるとき、介護保険の息の根は止まります。
それは単なる人材不足などの問題どころではなく、制度の機能が停止するという事。
制度が止まれば支援は届かず、孤立する要介護者が増え続け、社会の崩壊に繋がってしまうのです。
多くの人がこの現実に目を向け、考え、声を上げ続けることが、国民の暮らしを守る方法なのです。

あとがき

とんでもなく大変な事態になってるという事実認識がとても重要かと思います。現役の方は、キャパぎりぎりのケース数を抱えている方がほとんどではないでしょうか。”何かあればケアマネに”の風習が激化(これは利用者・家族からだけじゃなく、事業者からも)し、休日や夜間・早朝の着信なんてざら。シャドーワークの多さが異常と感じるほどです。

それでも報われない現実の中で、利用者の生活を背負い、現場の最前線に立ち続けています。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!お問い合わせは、ホームページのCONTACTフォーム・XのDM・InstagramのDMにてお願いいたします!