こんにちは、KAIGO KAKUMEIです。
私は介護業界に入る前、とある業界で営業職を経験していました。
そこでは、そもそも商品に興味がない人に話を聞いてもらい、必要性を感じてもらい、ようやく選択肢に入る。そんな営業も決して珍しいものではありませんでした。
その後介護業界に入り、介護保険サービスの営業を経験した時、正直かなり驚いたことを覚えています。
介護保険サービスの営業といえば、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、病院の地域連携室などを回るのが一般的です。
そして現場では、「営業に行っても紹介がない」「新規利用者が増えない」「介護の営業は難しい」といった声をよく耳にします。
しかし、営業職を経験していた私には、少し違って見えていました。
すでにサービスを必要としている人がいる。
しかも、その人たちとつながっている専門職がいる。
営業という視点だけで見れば、介護保険サービスはかなり恵まれた場所からスタートしているのではないでしょうか。
今回は、介護保険サービスの営業について、少し違う角度から考えてみたいと思います。
第1章|介護保険サービスは「需要を作る営業」ではない
一般的な営業では、まず商品やサービスを知ってもらうところから始まります。
興味を持ってもらう。必要性を感じてもらう。比較してもらう。そして、ようやく購入や契約につながる。
つまり、まだ存在していない需要を作ったり、潜在的なニーズを表に出したりする工程が必要になります。
では、介護保険サービスはどうでしょうか。
ケアマネジャーには、すでに担当している利用者がいます。
病院には、退院後の生活を考える必要がある患者がいます。
もちろん、すべての人が同じサービスを必要としているわけではありません。身体状況や生活環境、家族関係、経済状況などによって必要な支援は異なります。
それでも、デイサービスが必要な人が現れれば、どこかのデイサービスを探す必要がある。
訪問介護が必要になれば、どこかの訪問介護事業所につなぐ必要がある。
退院後に施設生活が必要なら、受け入れ先を探す必要がある。
つまり、介護保険サービスの営業では、
「介護サービスを使いませんか?」とゼロから必要性を作るのではなく、
「その選択肢の中に、私たちの事業所を入れてもらえませんか?」というところから始まるケースが多いのです。
私は、この違いはかなり大きいと思っています。
第2章|すでに「買うこと」が決まっている
以前いた営業の世界に置き換えるなら、商品を買う気がまったくない人と、すでに購入することを決めて比較している人では、営業の難易度はまったく違います。
介護保険サービスの営業は、後者に近い。
少し乱暴な表現になりますが、すでに「買うこと」は決まっている。
あとは、どこを選ぶか。
もちろん、空き状況や送迎範囲、医療対応、利用者との相性など、事業所選びにはさまざまな条件があります。
では、条件が似ている事業所が複数あった場合、何が選択を左右するのでしょうか。
私が介護保険サービスの営業をしていた頃、パンフレットだけを渡して帰ることはほとんどありませんでした。
雑談をし、関係性ができてくれば、「最近、誰か困っている人いませんか」と普通に聞く。
すると、具体的な利用者の話が出てくることが良くありました。
実際、その場で利用者へ連絡を取ってもらい、新規利用につながったこともたくさんあります。
私が、その場で新しい需要を作ったわけではありません。
需要は、私が営業に行く前からそこにありました。ただ、思い出してもらっただけです。
「この前来てくれたな」「相談した時、すぐ返事をくれたな」「一回あの人に聞いてみよう」
特にケアマネージャーへの営業では、事業所そのものより先に、営業に来た「人」が思い出される場面も少なくありません。
案件が発生した時に、選択肢の中に自分たちがいるか。
介護保険サービスの営業では、ここが非常に重要だと感じています。
第3章|営業先は「パンフレットを渡す場所」なのか
介護業界では、営業職として採用された人だけが営業をするわけではありません。
施設長、管理者、生活相談員、サービス提供責任者などが、ある日突然、
「新規を増やして」「営業に行ってきて」と言われることもあります。
そして、パンフレットを持って居宅介護支援事業所を回る。空き状況を伝える。名刺を渡す。
これで「営業に行った」ことになる。
しかし、相手の立場から見ればどうでしょうか。
「利用者一人ひとりに寄り添います」「その人らしい生活を支援します」地域に根ざしたサービスを提供します」
似たような言葉が書かれたパンフレットを、何事業所から受け取っているのでしょうか。
その中で、なぜあなたの事業所を選ぶのか。
営業先と関係を作る。相談された時に早く返事をする。難しいケースでも、まず一度話を聞く。
何でも構いません。
相手にとって「この人に一度聞いてみよう」と思う理由を、一つでも作れているか。
パンフレットを渡すことが営業なのではなく、空き情報を伝えることだけが営業でもありません。
計画書や報告書を届け、パンフレットを一枚置いて帰る。それを「営業一件」と数えているなら、一度その営業の中身を考える必要があります。
介護保険サービスの営業先は、自分たちの情報を一方的に渡す場所ではなく、すでに相手の中に存在するニーズを思い出してもらう場所でもあるのではないでしょうか。
もちろん、営業に行けばすぐに紹介が生まれるわけではありません。
どれだけ良い関係を築いていても、必要なサービス、空き状況、曜日、送迎範囲、本人や家族の希望など、単純にタイミングや条件が合わないことは珍しくありません。
営業したのに紹介がない。だから営業方法が悪い。そんな単純な話でもないのです。
ただ、紹介が生まれない状況が続いた時に、すべてを「介護の営業は難しい」という一言で終わらせてしまっていいのでしょうか。
本当に難しいのは、介護保険サービスの営業なのでしょうか。
それとも、営業を営業として考える機会がないまま、業界で当たり前とされる方法を繰り返していることなのでしょうか。
第4章|「人を扱う仕事だから」で、営業を曖昧にしていないか
こうした話をすると、「介護はモノを売る仕事ではない」「人の人生や命に関わる仕事だ」という意見もあると思います。
その通りです。身寄りのない人もいます。経済的な問題を抱えている人もいます。
医療的な対応が必要で、なかなか受け入れ先が見つからない人もいます。
家族関係や生活環境など、複雑な事情を抱えたケースも珍しくありません。
介護業界に10数年身を置いてきたからこそ、その現実は理解しているつもりです。
ただ、それと介護事業を数字で考えないことは、まったく別の話ではないでしょうか。
稼働率。新規利用者数。契約件数。空床。売上。
月末になれば、多くの事業所が数字を見ています。
「今月、新規は何件?」「あと利用者が二人ほしい」「稼働率が落ちている」
結局、数字で考えています。
にもかかわらず、営業の話になると、
「人と人とのつながりだから」「ご縁だから」「介護は普通の営業とは違うから」という言葉が出てくる。
もちろん、人とのつながりも、ご縁も大切です。
しかし、それらの言葉が、営業を営業として考えないための社交辞令になってはいないでしょうか。
利用者を単なる数字として扱うことと、事業を数字で考えることは同じではありません。
営業を分析することと、人の尊厳を軽視することも同じではありません。
ここを混ぜてしまうから、介護保険サービスの営業は必要以上に曖昧になっているように感じます。
まとめ|介護保険サービスの営業は、本当に難しいのか
介護保険サービスの営業には、当然難しい部分があります。
すべての利用者を受け入れられるわけではありません。利用者との相性や医療対応、家族事情など、単純な営業論だけでは語れない部分もあります。
また、営業先との関係が良好でも、必要なサービスやタイミングが合わず、紹介につながらないことは当然あります。
しかし、営業という視点だけで見れば、介護保険サービスにはすでにニーズがあります。
そのニーズを抱えている利用者や患者とつながる専門職もいます。
営業先も、ある程度見えています。
私は介護業界に入る前に営業職を経験していたからこそ、この環境を「難しい営業」とはあまり感じませんでした。
むしろ、かなり恵まれた条件から始まっているように見えました。
介護保険サービスの営業が難しいのではなく、営業を「営業」として見ないまま営業しているから、必要以上に難しくなっているのではないか。
そんな風に感じています。
あとがき
この話は介護保険の枠を外した「介護自費サービス」になると、まったく違う形になります。
介護自費サービスを始める。
すると、まず居宅介護支援事業所や地域包括支援センターへ営業に行く。それが当たり前のように語られています。
もちろん、それも一つの営業方法です。
ただ、介護保険の枠を外してサービスを作ったのに、なぜ顧客を探す場所は介護保険の中と同じなのでしょうか。
私は、そこに以前から少し違和感を持っていました。
では、誰に売るのか。どこに営業するのか。そして、どうやって自分のサービスを必要とする人につながるのか。
私自身、介護自費サービスを始めた際には、介護業界で当たり前とされる営業ルートとは違う場所から顧客を探しました。
介護保険サービスの営業と、介護自費ビジネスの営業では、そもそも「顧客を探す場所」から考え直す必要がある。
私自身が実際に行ってきた営業手法や、顧客を探す際の考え方についても、現在少しずつ言語化を進めています。
この話については、また別の機会に詳しく書きたいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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